院試

慶應理工の院試について所感を述べる

今回は多くの人が気になっているであろう,慶應理工の大学院入試について所感を述べたいと思います.筆者は慶應の理工学部を卒業して,そのまま慶應の理工学研究科の大学院入試を受けました.理工学部の大学院進学率は7割程度なので,多くの理工学部生が受ける試験になります.大学院入試を控える受験生および興味のある方に向けて,筆者が大学4年生の頃に知りたかった情報を提供しようと思います.

なお2020年度の入試についてはコロナウイルスの影響を受け,大きく入試要項が変更される可能性があるので,受験生の方は公式ホームページを逐一チェックされることをオススメします.

今回語るのはあくまで筆者が受験した年の大学院入試の感想になります.それでは始めていきましょう.

慶應義塾大学理工学部には,大学院として理工学研究科が併設されています.理工学部を卒業して,大学院に進む学生はほとんどがこの慶應義塾大学大学院理工学研究科を受験することになります.理工学研究科の中には専攻が「基礎理工学専攻」「総合デザイン工学専攻」「開放環境科学専攻」の3つに分かれており,各研究室はこの3つの研究室のいずれかに属しています.

募集人員は各専攻それぞれ200名の計600名で,合格率は大体92%くらいと言われています(入試説明会の教授曰く).この合格率を高いと見るか低いと見るかは人次第ですが,まあ個人的には高いのはないでしょうか.

慶應の院試は6月入試と8月入試に分かれており,簡単にいうと6月入試が推薦入試,8月入試が筆記試験となります.さらに言うと6月入試は書類審査のみで合格するパターンと口述試問が課されるパターンがあるので,8月入試も含めて合計3つのパターンがあると言えるでしょう.

6月入試(推薦入試)

いわゆる推薦入試になります.必要書類を提出すると,大学1年次から3年次までの成績により合格,口述試問行き,不合格の3つに振り分けられます.これまで大学の勉強を頑張ってきた人はここで合格を勝ち取り,筆記試験を行うことなく安心して卒業研究に取り組むことができます.口述試問行きに関しては成績が中程度の学生がこちらに回ることになります.残りの成績下位2~3割の学生が不合格になるといったイメージです.6月入試で不合格になると,8月の筆記入試に新たに出願する必要が出てきます.6月入試全体のイメージとしては合格:口述試問行き:不合格の人数比は2:2:1くらいのイメージになります.

書類審査だけで合格する学生に関しては,特に言うこともなく,大学院への切符を手に入れたままスムーズに卒業研究へ移行することができます.口述試問に回る学生に関しては入試の日程が一日増えはしますが,大学院の入試自体が落とすための入試ではなく受からせるための入試なので,よっぽどのこと(試験時間に遅刻するなど)がない限り落ちることはありません.口述試問は6月中に速やかに行われるので,ここに回された学生も比較的スムーズに卒業研究に移ることができます.

問題はここからです.残念ながら6月入試に不合格となってしまった学生は,8月入試(筆記試験)に回ることになり,8月中旬の試験に向けて受験勉強を開始する必要があります.研究室によっては大学院入試に専念させてもらえるところもあるようですが(研究活動をお休みするということ),当然ながらそんな研究室ばかりではないので学部4年生が行う雑務であったり研究活動をこなしつつ,受験勉強に励むことになります.このように6月入試で口述試問行きになるか不合格になるかは4年生にとって天と地ほどの差があり,ボーダーラインについて色々な噂が飛び交います.筆者もかなり気になったのですが,成績評価のA-Cが12単位以上というのが内部生の1つの目安とされていました.当時は成績がA, B, Cの3段階評価(それ以外は不合格)でしたが,現在はS, A, B, Cの4段階評価(それ以外は不合格)になっているので,あくまで参考程度に見てもらえると嬉しいです.

口述試問の内容について気になる方もいると思うのでここで説明しておくと,そこまで突飛なものは出題されず,大学院への志望理由,研究室で何がやりたいか,得意・不得意科目などオーソドックスな質問しか基本的にされません.しかし入試要項に「板書での回答を求める場合もある」と書いてある通り,簡単な学術的な内容,例えば「フーリエ変換を板書を使って説明してください」等の質問はあり得る(教授が言ってた)ので準備しておくに越したことはないです.ちなみに筆者の年度では学術的な試問が出たという話は,友達も含めてあまり聞きませんでした.

注意すべきことが2つあり,1つ目は大学院への志望理由を聞かれたとき「良い就職先へ行きたいからです」と言わないことです.「大学院は就職予備校ではありません」と厳しく詰められることになります.もう1つですが口述試問にはスーツで行くようにしてください.他大学ではスーツで大学院入試の面接に行くことを揶揄う風潮もあるようですが,慶應に関しては学生はスーツで口述試問を受けます.指定があるわけではないのですが,私服で口述試問に行きめちゃくちゃ怒られた友人がいます笑.

6月入試に関しては,大学院入試を受けるほとんどの学生が(外部生も含めて)受験資格があるので,学部時代の成績に自信がある学生は積極的に6月入試を受けることをおすすめします(だいたい受かります).

8月入試(筆記試験)

6月入試で不合格になった学生は8月にある筆記試験に回ることになります(ちなみに筆者はこの試験を受けました).TOEIC, TOEFL いずれかのスコアシートを含む必要書類を提出し(研究室は第2希望まで決める),各専攻ごとの筆記試験を受けた後,口述試問を受けて合否が決まります.8月入試に回る学生は基本的に成績が悪いので,大学側から学力を信用されていません.その学力を確かめるために筆記試験が課されているということです.試験問題については専攻ごとに違うのですが,筆者の場合は大学3年生のときに受けた専門教育科目のうち必修科目の問題がいくつか出題されました.気になる難易度は,易しすぎもせず難しすぎもせずといった印象です.すべての問題が解けるわけではないが,難しい印象も受けない,感覚としては過去問がない状態で定期試験を受けるのに似ています.とは言え定期試験に比べ,出題範囲は多くなるので受験勉強が必須になります.次におすすめの勉強方法を書いていきます.

まずは解答付きの過去問を入手しましょう.解答なしの過去問であればメディアセンターで入手できますが,先輩が代々解いてきた解答付きの過去問を探します.これがあるかないかで勉強効率がかなり変わってくるので,先輩に頼むか,仮に研究室内に存在しなくても他の研究室の友達をあたり,絶対に手に入れましょう(そこまで難しくはないはず).試験問題は基本的に過去の必修授業で習ったことの中からしか出題されないので,当時のノートや教科書を引っ張り出した上で過去問を解いていきます.8年分ほどやると出題傾向や頻出問題が見えてくるので,頻出問題をマスターし本番でその問題が出た場合は絶対に落とさないよう対策します.ここまでやれば試験に落ちることはほぼなくなるのですが,余裕のある場合は過去問をすべてマスターした上で,周辺の似た分野の問題もさらっておきます.筆者の場合はある程度の暗記が前提となっている問題も多かったため,直前まで対策していた記憶があります.

大学院入試は落とすための試験ではなく,受からせるための試験なので突飛な問題は出題されません.努力がきちんと点数に反映される試験なので,気を抜かずに対策すれば必ず合格します.合格率も92%と高く,筆者の年度では「〇〇専攻の〇〇分野の学生は今年全員合格らしい」という噂が流れるほど通りやすい試験でもあります.その一方で,実際に落ちてしまった他学科の知り合いもいます.その学生は「予想した範囲とは全く違う分野の問題が出題されて解けなかった」と言っていたので,油断はせず過去問を使ってしっかり対策をしましょう.

ちなみに口述試験については6月入試と大きく内容は変わりません.志望動機など必ず聞かれると分かっている質問は,事前にある程度準備をしておくと当日慌てずに済むと思います.

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