大学院

大学院に入って良かったこと

今回は大学院に入って良かったことを実体験を元に語っていきたいと思います.

特に理系の学生で,大学院に進学するか迷っている方のためになれば幸いです.

筆者は慶應の理工学部を卒業した後,そのまま大学院に進みました.大学院を卒業した後,無事ある会社に就職し,現在は研究職として働いています.

私自身,大学院に進んで心から良かったと思っています.今回はそんな筆者が大学院に進むメリットについて解説していきたいと思います.

必ずしも全員にオススメというわけでもないので,ご自身の将来と照らし合わせて考えてみてください.それではいきましょう.

メリット1:研究のやり方を学べた

筆者が学部4年生の頃に行なった研究は,研究テーマおよび研究手法が全て教授や博士課程の学生から与えられていました.いわばタスクが上から降ってくるような状態でした.毎週研究ミーティングはありましたが,「次はこの部分をこうしよう」「この結果はここがおかしいのでは?」というような考察は教授や博士課程の学生がメインで行っていたと思います.これはある程度仕方ないことで,何故かというとその分野における知見が学部4年生と教授(および博士課程の学生)では天と地ほど差があるからです.

基本的に学部生は上からの指示を全うしていれば,難なく大学を卒業することができます.これは教授が研究テーマや研究手法を考えてくれるからですね.一方,大学院生はどうなるかというと,そこまで教授は面倒を見てくれません.研究テーマだけは与えられた状態で,研究手法は自分で考え探り当てていくのが修士学生の研究であると感じました.さらに博士課程になると研究手法だけでなく,研究テーマも自ら生み出すことが求められます.世界の論文誌を読み漁り,この部分であれば自分たちの研究チームで新規性・進歩性が生み出せそうだと判断し,実際に研究成果を出すことが求められます.このレベルまでくると,教授と博士課程の学生の立場は研究を行う上でほぼ対等のような形になります.実際私が所属していた研究室でも,教授が分からないことを聞きに博士課程の学生のもとを訪ねるというシーンを何度か見たことがあります.

基本的に大学院は研究を行う場所なので,研究を行う能力は2年間でかなり鍛えられます.研究手法を考え,失敗したら次はどのようなアクションを起こすべきかを能動的に考える必要があるため,研究者としての実力は格段にレベルアップすることでしょう.

メリット2:自分のやりたい研究ができた

メリット2つ目.大学院では自分のやりたい研究ができます.あまり夢のないことを言うようで申し訳ないですが,企業に入ると自分の好きな研究は中々できません.

詳しいことは「会社で働くということ」という記事に書いたのでそちらを読んでいただきたいのですが,簡単にお話すると,会社員である限りは,経営トップが決めた経営方針から逆算して自らの研究内容が決まるのです.そこに自らの意思は介入しません.

最近では一部,ジョブ(研究内容)ごとに採用を行う会社も増えてはきました.しかし依然として多くの会社では,入社後に何の研究を行うかを知らせないまま新入社員を研究職として採用します.

入社後に「君はここの部署でこういう研究をしてね」と伝える企業が非常に多いのです.これでは自分が望む研究など出来るはずもありません.

大学院でそうした面が全くないとは言いませんが,少なくともある程度の成績をとっていれば,研究室を自由に選ぶことは可能です.その研究室がどのような研究を行っているか把握した上で研究室配属に臨むことができるので,自らの希望と大きくかけ離れた内容の研究をすることは少ないはずです.

これは皆さんお気づきではないかもしれませんが,非常に恵まれたことなのです.

特に自分のしたい研究内容が,民間企業では中々できないような代物の場合は,大学院時代を有効活用することをオススメします.

メリット3:学会発表する機会に恵まれた

大学院に進むと学会発表をする機会に恵まれます.筆者が所属していた研究室では,修士を卒業するまでに少なくとも1人1回は海外での学会発表が義務付けられていました.皆さんも修士に進めば少なくとも1度くらいは国内外の学会で発表する機会が与えられるはずです.

社会人になれば分かるのですが,学会発表の機会というのは非常に貴重です.会社に所属してしまうと,純粋なアカデミックな世界ではなくなってしまうので,たとえ素晴らしい研究成果を挙げたとしても,利益関係により学会発表の機会というのは中々訪れません(もしくは発表時期が遅れます).社外発表や特許所得のタイミング如何に依るからです.大学院というアカデミックな世界に身を置いているからこそ,自分の研究成果を何のしがらみもなく発表することができます.これは誰にでも与えられるものではない非常に恵まれた状況なのです.

もし学部で卒業する場合は就職活動や卒業研究に忙殺され,学会発表する機会はほぼないです.多くの学生が学会発表ゼロのまま卒業するのではないでしょうか.せっかく理系に来て研究に少しでも興味があるのであれば,大学院に進学し,国内外で学会発表するというのは非常の良い経験になるのではないでしょうか.

メリット4:技術職,研究職に就くことができた

大学院に行くことで,技術職,研究職に就くことができます.メーカーの技術職,研究職は大学院修了が応募条件になっていることが多いです.もしあなたが将来,「トヨタで研究したい」であったり「JAXAで働きたい」等々思っているのであれば,是非大学院に進学して研究を極めることをオススメします.

研究で結果を出している学生は大体就職もうまくいきます.

IT企業はどうでしょうか.最近では文系出身のSEの方も増えてきているように必ずしも大学院に行く必要はありません.大学院に通わなくてもプログラミングができれば問題ないですからね.実際に学部で卒業してそのままGoogleに就職した知り合いがいます.

ただこれがAIや機械学習など少しでも研究寄りの内容を扱う職種になったら話は別です.機械学習などは近年ホットワードで大学院でバリバリ研究をこなしてきた人材がそれらのポジションを奪っていきます.ただただコードがかければ良いわけではなく,AIの周辺知識に明るい人材はトップクラスの大学院に集まっていると企業は考えるため,そのような職に就きたい方は大学院に進学することをオススメします.

逆に理系の研究内容とは全く関係のない職種に就こうと思っている場合,近年なら例えばコンサル会社や投資銀行などに勤めようと思っている学生は,大学院に行く必要はありません.理系の大学院からそのような会社に進む学生も最近は多いですが,それはただ単に彼らが優秀,かつ理系職を選ばなかったからで,大学院に行っていたという事実は選考に何ら関係ないと思います.学部で卒業していてもおそらく内定を得ていたでしょう.

最後に

繰り返すように大学院は研究をする場所ですので,伸びるのは研究に関する能力です(なので多少英語力も伸びます).個人的には,技術職や研究職に一切就く気がないのでしたら,学部で就職した方が無駄な時間を過ごすことなく有意義な生活ができると思います.

もちろん,研究職といった理系職に就こうか,文系就職しようか迷っている方は大学院に行っても何ら問題ありません.大学院まで行くことで文系就職をした場合不利になることはまずありません(周りが2歳年下になるくらいですかね笑).

以上になります.

実際に社会人になってみて思いますが,社会人も意外と悪くないです.モラトリアムだからといって無意味に大学院に行くのではなく,積極的に人生を前に進めると良いことがあるかもしれません.

もちろん研究職,開発職,技術職に就きたい方は,大学院まで行ってアカデミックな世界で思いっきり活躍してください.もしかしたら民間の研究職のみならず,そのまま大学教授へのルートが開けるかもしれません.

応援しています.

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