大学院

大学院に入って後悔したこと

前回の記事で,大学院に入って良かったこと,大学院に進学するメリットを解説しましたが,今回は逆に大学院に入って後悔したこと,デメリットを解説していきたいと思います.

基本的には筆者は大学院に入って良かったと思っているのですが,その中でもやはり後悔しているポイント,また「こういうデメリットもあるなー」というのはたまに感じたりします.

大学院に進学するか迷っている方,大学院に進学予定ではあるが院生活をより良いものにしていきたい方には是非聞いていただきたいです.

デメリットその1:大学院での研究生活は孤独になりがち

いきなり幸先が悪いですね笑.詳しく解説していきます.大学生の頃は皆さん,理系だけでなく,文系の友人も沢山いたと思います.サークルの集まりや飲み会なども沢山あったでしょう.しかし大学院に進学するタイミングで文系の学生は就職してしまうため,大学院生活における同学年の友人は基本的に理系の院生のみになります.これだけでもだいぶ友人関係が狭まりますよね?

そして大学院は大学とは異なり授業がほとんどないため,他の学生と一緒に授業を受けることがなくなります.ですので基本的に研究室のコミュニティで人間関係が完結することになります.

大学院での幅広い交友関係は期待しない方が良いです.もし共同研究などで研究者や学生と関わる機会が多いのであれば,それはかなり恵まれた環境だと思ってください.

交友関係が研究室に限られるとどのような生活になるでしょうか.全体の人数が少ない研究室に配属すると,孤独になるというのが目に見えると思います.1学年が5-7人程度いるような研究室は雰囲気もよく,皆でワイワイ研究することができますが,逆に1学年の人数が1-2人しかいないような研究室は覚悟したほうが良いです.

1学年が5-7人程度いるような研究室は,季節ごとに合宿をしたり,イベントが企画されたりして盛り上がるので楽しい研究生活を謳歌できます.逆に1学年の人数が1-2人程度だと全体でも5-6人程度の小規模研究室となり,イベントや飲み会などもほぼ開催されません.毎回5-6人の同じメンバーで飲んでもつまらないですよね?

関わる人数も少なく,かつイベントなどもない.こういう研究室に配属となると結構しんどいです.周りも見渡しても,精神を病んでしまう学生が多いのは,どちらかといえば小規模研究室に所属している学生です(もしくはパワハラ・アカハラ研究室).

なのでもし皆さんがまだ研究室を選べる立場にあるのであれば,できるだけ大規模研究室に行くことをオススメします.そちらの方が圧倒的に楽しい研究生活を送ることができるからです.

デメリットその2:社会人になると大学院の研究内容は全く扱わない

これは意外かもしれませんが,皆さんがもし日系企業に研究職として就職した場合,大学院まで行ってきた研究内容は全く扱わないことが多いです.そしてこれは,大学院での研究内容が基礎研究寄りであればあるほど顕著になります.

民間企業はご存知の通り,利益追求団体です.経営トップが決めた経営方針に沿って,今後利益が出そうな領域に研究開発費を投資することになります.経営方針に従い研究部門のトップが研究開発費を各部署に割り振っていくイメージです.

お分かりかと思いますが,実用まで50年かかりそうな基礎研究に企業はお金を出しません.数年先に利益になる可能性が高い研究に企業はお金を投資します.研究部門の業務は,大半が数年先を見越した研究になると考えて良いです.

大学院で扱う基礎研究は,基本的に実用が数十年先のものを扱うことが多いので,企業の研究と相容れないことが多いです.ですので大学院で基礎研究を行っている学生は,ほぼほぼ社会人では学生時代とは全く異なる研究内容を扱うことになるでしょう.

例外として,理化学研究所やNTT研究所(分野によってはIBM基礎研究所)あたりに入った学生は,学生時代の研究を継続して行っているイメージがあります(あくまで筆者個人のイメージ).ここら辺は入社難易度もすこぶる高いので,学生時代に顕著な成果を出した学生がその先も見込まれて研究を続けているケースが多いです.

基礎研究に比べ,応用研究を行っている学生は,学生時代の研究内容を生かせる業務に就ける可能性が高いです.AIなどの研究は汎用性が高く,企業に就職してからも役立ちますし,回路設計やネットワーク系の研究も知識がそのまま業務に生きることが多いです.

周りを見渡してみると,博士課程を修了した学生であっても「この会社で何をやるか聞かされていない」というような状態で入社してきている方も多いので,そのあたりは覚悟して企業の研究職として働く必要があります(研究のやり方だとかソフトウェアの使い方,プログラミング能力などはもちろん学生時代の知識を生かすことができます).

デメリットその3:社会に出るのが2年遅れる

大学院に進学することで社会に出るのが2年遅れます.一般的に大学を卒業した学生は22歳(浪人した方は23歳)で社会に出ますが,大学院を修了した学生は24歳(浪人した方は25歳)で社会に出ることになります.例えば,大学受験で浪人し,大学院まで修了した方で,誕生日が5月だとすると,社会人になって僅か1ヶ月で26歳の誕生日を迎えることになります.

当然のことではありますが,20代前半を丸々学生として過ごすことに一種の罪悪感や危機感を覚えてしまうかもしれません.「周りの友人が新社会人として日々成長しているのに,自分は研究室にこもって研究しているだけでいいのか」と思う方もいらっしゃるでしょう.

個人的には大学院に通う必要がない方は,理系だからという理由でわざわざ大学院に行く必要はないと思います.自分が将来したい仕事を考えて,そこに到達する道筋に大学院があるなら進学すれば良いです.

今だからこそ思いますが,正直大学院に行くことで金銭的なメリットを享受することはほとんどないと思います.日系民間企業の技術職や研究職の待遇はお世辞にも良いとは言えません(国が運営する研究所,つまり公務員なら尚更).文系就職に比べると,理系の就職は(何故か)給料が低いことがほとんどです(メーカーや技術よりの企業は給料高くないです).

起業するなり,外資系の研究職(多くの場合,本国勤務)で働かない限りは,金銭的な意味でメリットはないと思います.そのあたりを踏まえ,自分が将来どうなりたいかをよく考えて,逆算で進路を決めると良いと思います.

最後に

以上が大学院に入って後悔したこと,またデメリットになります.

お伝えしたいことは2点あります.1つ目が,研究室を選ぶならできるだけ大規模な研究室に入った方が良いということです.孤独になりがちな大学院生活を楽しく過ごすことができます.お伝えしたいこと2点目は,日系大企業の研究職にはそこまで旨味がないということです.多くの企業が新卒で月給24万程度(手取りだと20万弱)なので,金銭的な面を期待しない方が良いです.お金が欲しいのであれば外資系企業の研究職や技術職に就くなり起業するのが良いでしょう.

以上になります.

-大学院