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慶應理工 学科ごとの特色紹介

今回は慶應理工の学科ごとの特色紹介をしようと思います.慶應理工には,機械工学科,電気情報工学科,応用化学科,物理情報工学科,管理工学科,数理科学科,物理学科,化学科,システムデザイン工学科,情報工学科,生命情報学科の全部で11の学科があります.

慶應理工学部の中でも各学科にカラーがあり,気になる皆さんも多いと思うので,今回は各学科の特色を紹介できたらと思います.あくまで筆者の周りの学生から聞いた話がベースになるので,話半分で聞いてください.年度ごとに異なる可能性も十分あります.

なお,今回は学科ごとの人気度を5段階で評価したいと思います.学科名の横にある星の数が多いほど,その学科が人気であることを示します(Max☆5つ).それではいってみましょう!

機械工学科 ☆☆☆☆

ロボットを作りたい学生が入る学科.人気は比較的高い.優秀で真面目な学生が多いイメージ.機械力学,材料力学,流体力学,熱力学などを学ぶ.機械工学科の友人は2年次授業をまとめることで全休を2日つくり出していた(羨ましい限り).

研究室は意外にもロボットだけではなく幅広い.流体シミュレーションや材料開発,センサ開発などを行う研究室がある.宇宙関連の研究室もあり,石上研究室では月惑星探査ロボットの研究が,松尾研究室では航空宇宙推進に関する圧縮性流体の研究ができる.

電気情報工学科 ☆

筆者の頃はあまり人気がなかった.学生は成績上位と下位の差が激しいイメージ.研究室振り分けにおいてZ枠という枠があり,下位10名程度は本人の希望もそこそこに勝手に研究室に振り分けられる(成績不良者が不人気研究室に集まることを防ぐため).

情報工学,電気回路,半導体などを主に学ぶ.研究室は通信,量子エレクトロニクス,LSIなどの研究を扱う.就職に関しては推薦も含めてすこぶる良いので,その点に関しての心配は全く要らない.

応用化学科 ☆☆☆☆☆

慶應には化学を研究する学科として,化学科と応用化学科がある.化学科はより基礎研究寄り,応用化学科はマテリアルデザインや環境化学,分析化学,オーガニックサイエンス,バイオサイエンスなど,より現実世界に即した研究を行う.学生の人数は100名超えとかなり多く,女子の人数も比較的多いことから和気藹々と過ごしている印象を受けた.

学部3年時には週2回の実験があり,その時期はレポートの作成でかなり忙しそう,,

分子生命化学研究室や分子有機化学研究室など個人的に興味をそそられる研究室が多い.化学メーカーの研究職は他の分野と比べると比較的狭き門であるが,難なく通っているイメージがある.なお,化学メーカーだけでなく製薬会社に就職する学生も多い.

総じて優秀で明るい学生が多い.

物理情報工学科 ☆☆☆☆☆

通称「物情」.人気はかなり高い.物理学科ほどアカデミックに振り切った感じもなく,かといってアプリケーション寄りでもない非常にバランスの取れた学科.

量子コンピュータやナノテク,通信,プラズマなど多種多様な研究室が所属している.学生も多様性に富んでおり,超真面目で成績をSかAしか取らないような学生から,チャラい学生,髪色がおかしい個性的な学生,体育会系など多様な人材を抱える.総じて悪い印象はない.

大学入学当初は物理学科に入ろうと思っていたが,大学の物理に打ちのめされ,やや実用的な研究もできる物情を選んだ学生がかなり多い(悪いことでは決してない).研究室がかなり幅広いので,まだやりたい研究が明確に定まっていない学生にオススメしたい学科である.

管理工学科 ☆☆☆

慶應理工の中で一番文系に近い学科.理工学部全体だと院進の割合は7-8割程度だが,管理工学科に限ると就職:院進=5:5となる.博士進学しようと考えている人がこの学科に進むとかなりのマイノリティになるので要注意.逆に学部で就職しようと心に決めている人にとってはオススメできる学科である.

理系でありながら経営・経済を学ぶことができる.「システムと人間」「応用統計と最適化」「情報工学と人工知能」「経営と経済」を柱に,統計解析や情報処理,オペレーションズリサーチといったインダストリアル・エンジニアリングを学ぶことができる.

ここを首席で卒業した友人は,「アンケート調査などを卒論の結果として用いたので理系的な素養はあまり身につかなかった」と言っていた.イメージとしては数式を用いて,現実の課題解決を行うイメージ.学生も理系というよりは文系学生の雰囲気を纏っている.

理工学部ソフトボール大会で優勝常連だったのが管理工学科の研究室だった(ソフトボール採用という噂がまことしやかに囁かれていた).

数理科学科 ☆☆

数学が大好きな,もの好きが進む学科.大学の数学は高校までとは異なり,多種多様な記号を用いた概念的な話が多く登場する.数学科に進める学門では,学部1年生の頃から数学の試験が他の学門とは異なり,その難易度が度々話題になっていた.

多くの学生は,この摩訶不思議な世界に嫌気がさして数学が好きではなくなるのだが,それでもめげずに数学への愛を突き進むことができた学生だけが進学することができる学科.正直頭はかなり良い.しかしその特殊性から学科自体の人気はあまりない.

数理科学科に進学すると,数学専攻と統計学専攻の2つの選考から1つを選ぶことになる.研究室は,幾何学関数論,整数論,統計学,複素幾何学,幾何解析など,一見しても何をやっているか分からないような難解な研究を行っている.

実験の授業がないので,実験でヒィヒィ言っている他学科の学生が「数学科いいなー」と言っているのをたまに聞くが,おそらく実験よりも難しい授業を日々こなしている.

物理学科 ☆☆☆☆

理系学生憧れの学科.憧れの学科にも関わらず☆4の理由は,大学入学後に受ける物理の授業によって大学の物理に打ちのめされ,物理学科への進学を敬遠する学生が多発するからだ.

力学や電磁気学も初期の頃は高校物理の延長で楽しめるが,より深い部分に入ってくると何を言っているのか分からなくなってくる.特に1年後期の物理の授業は単位を落とす人が頻出する難易度であり,その授業を楽しめた人だけが意気揚々と物理学科に進学することを許される.

カリキュラムとしては量子力学・統計力学・数理物理学などの基礎を固めた上で,原子核・素粒子物理学・地球物理・天体物理・相対性理論・生物物理・物性物理などを学ぶ.友人に一度講義資料を見せてもらったが,ハミルトニアンを大量に使った課題が並んでおり,課題をこなすだけでも大変そうであった(次の授業までに当てられた学生が解くスタイルの授業だった).

研究室は理論研究室とそれ以外に分かれており,理論研究室では物理の根幹をなすようなアカデミックな内容に焦点を当てている.宇宙物理や素粒子論など興味深い内容を扱うことができる.学生数は定員41名と少なく,優秀で穏やかな学生が多いイメージ.

化学科 ☆☆☆☆

化学分野の基礎研究を行う学科.数値シミュレーションによる反応プロセスの解析,触媒や磁性体など高機能材料の開発,生命現象の分子レベルでの解明などを研究内容として扱う.

1学年が40名程度と少なく,高校のクラスのような和気藹々とした雰囲気で授業を受けることができる.学生数に対して教授の数が多いというのもこの学科の特徴.筆者の勝手な偏見だが,化学系の学生は要領が良いイメージが強い(頭も良い).

化学の中でもよりアカデミックな分野を研究したいという学生に是非おすすめしたい学科である.

就職に関しても,推薦は充実していないが,化学メーカ,素材メーカに限らず自動車や電子メーカ,重工など幅広い分野の企業に就職することができる(燃料の化学反応や素材開発はどの分野にも必要なため).またアカデミックな道に進む学生も多い.

システムデザイン工学科 ☆☆☆☆☆

通称SD.慶應理工の中で一番キラキラしている学科である.筆者の知り合いで,この学科に入って後悔している人を聞いたことがない.

やっている内容は分かりにくく,建築・デザイン・システム制御あたりがこの学科の本流だと思っている(違ったらごめんなさい).慶應の中で唯一建築を学べる学科であり,橋の模型を使いみんなでワイワイグループワークしている授業が印象的であった.

学科のテーマ自体が広く浅く学ぶことを目標にしているので,研究室も幅広い内容を扱っている.建築デザイン,環境デザイン,設計力学,超精密加工などのプロセス制御,人支援ロボット,バイオエンジニアリング,マイクロ流体システム,電力ネットワークシステム,パワーエレクトロニクス,情報通信を扱う研究室がある.

建築やデザインを学びたい学生はこの学科に進学することをオススメしたい.

一言で表すと楽しそうな学科である.

情報工学科 ☆☆☆☆☆

今現在,乗りに乗っている学科である.人工知能,機械学習,5G,ビッグデータといったホットキーワードに関する研究は全てこの学科で学ぶことができる.

筆者の頃は,C言語とJavaのバイリンガルを育成することを学科の目標としていた.「Pythonは?」となるかもしれないが,C言語とJavaが完璧に書ければPythonは秒で書けるので問題はない(簡単だから).

GAFAMなどの外資系企業に入って,ゴリゴリお金を稼ぎたいのであれば情報工学科に進学することをオススメする.当然日系企業からの視線もアツいので就職には困らない.

なお「プログラミングをしたくない」という学生は絶対に入ってはいけない.情報工学科はプログラミングをする学科である.

研究室はAR/MRといったコンピュータグラフィックス,機械学習,人工知能といったアプリケーション寄りの内容を扱う研究室から,意外にも超低電力プロセッサやブロードバンド移動通信,光ネットワークなどのハード寄りの内容を扱う研究室まで幅広い.

実験でPSPを題材に扱っていたりするなど,興味深い授業が多く,プログラミング好きなら進学して間違いない学科だと思う.学生の気質はTHE理系といった感じで女子は10%いるかいないか程度.

生命情報工学科 ☆☆

化学系志望の学生からは非常に人気があり,逆に情報系志望の学生からは全く人気のない学科.通称「生情」.化学・生物系のデータサイエンティストとなることを目標に掲げており,機械学習や人工知能,量子コンピュータを取り入れた情報科学によってゲノム解析や疫病の解明を目指す.

定員は43名と少なく,クラス単位での授業が多いため,雰囲気は高校の授業のような雰囲気となる.生命情報工学科の友人は良いところとして語っていたので楽しいのだと思う.

慶應医学部と提携した研究ができるなど,慶應ならではの研究ができる.がん医療の医薬を開発したり,人工タンパク質や人工細胞の研究ができたりするなど,理工学部と医学部の橋渡しとなるような研究ができるという意味で非常に魅力的な学科である.

矢上キャンパスは夜中の2-3時まで研究室の明かりが灯っていることが多いのだが,これは化学科,応用化学科,生命情報工学科の学生が実験で夜中まで残っているからである.化学系の実験は反応時間の関係で夜中に研究室に来る必要があったりするなど,研究へのコミットが求められるので,学生時代を研究に捧げたい学生にとっては最高の環境になり得る.

ちなみに筆者は生命情報工学科で平日9時17時,土曜にもコアタイムがある研究室を知っている.

以上となります.いかがだったでしょうか.

色々書きましたが,基本的には自分が研究したい内容を扱う学科に素直に進学するのが吉です(就職が良いからとかではなく).

是非進路選びの参考にしてみてください.

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