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アカデミアと企業の研究職の違い

今回は少し真面目にアカデミアの研究職と企業の研究職の違いを見ていこうと思います.

筆者自身,今現在研究職として働いており自分の進路を決める際に様々なことを調べました.今回は将来研究者になろうとしている学生の参考になればと思い,この記事を書きます.

アカデミアとは

アカデミアとは一般的に大学や理化学研究所などの国立研究開発法人のことを指します.皆さんも「ポスドク」という言葉を聞いたことがあると思います.これはポスト・ドクターの略で博士号取得後に任期制の職についている研究者のことを指します.ポスドクが働いているような場所をアカデミアとして想像してもらうと分かりやすいと思います.基本的には大学or理化学研究所をはじめとした国立研究開発法人のことだと思ってください.

企業の研究職とは

企業の研究職とは,電機メーカや製薬会社など民間企業の研究開発職(R&D職)のことを指します.有名なところで言うとNTT研究所や豊田中央研究所などがあります.民間企業には営業職や経理職,開発職などがあると思いますが,その並列関係に研究開発職はあります.

違いその1:取り組む内容

アカデミアと民間企業の研究職では,そもそもの研究スタンスが異なります.アカデミアで求められるのは,学術的に価値がある研究です.すなわちその研究で有名学術誌に論文を載せることができるかどうかが重要になります.一方,民間企業は利益追求団体なので利益を生み出す研究が求められます.平たく言えば儲かる研究です.その研究をすることで特許を取れたり,世界標準を握ることが出来れば会社に莫大な利益が入ってきます.民間企業で求められるのは,顧客からお金を引っ張ってこれるような実用的な研究になります.

違いその2:給与・福利厚生

これに関しては圧倒的に民間企業の研究職が優れています.ポスドクの平均年収が300万円程度と言われている中,民間企業の研究職は新卒で400-500万円程度もらうことができます.アカデミアで待遇トップと言われている理化学研究所でさえ,年収は500万円程度となります(昇給はあまりない).民間企業の研究職であれば当然年次による昇進やボーナスなどがありますので,待遇という面では民間企業の方が格段に優れています.

違いその3:研究のしやすさ

ここは若干意見が割れるかもしれませんが,基本的にはアカデミアの方が研究はしやすいです.まずテーマ選定に関してですが,学術的に価値があり尚且つ実現可能性があると認められればアカデミアではその研究を行うことができます.一方民間企業では,価値基準はあくまで会社に利益をもたらすかどうかですので,会社の方針に乗っ取っていない研究は却下されます.

業務内容についてもアカデミアの方が研究にコミットすることができます.研究費の調達など,書類作成的な作業に時間を使う必要はあるものの,基本的な業務内容としては各自,他の研究者と手を取りあいながら研究をメインで行うことができます.また利益相反がないため,情報開示的な意味でも制限が少ないです.

一方,民間企業の研究職の場合は,あくまで会社員として生活しているので,どうしても研究だけしていれば良いという話ではなくなってきます.具体的に言うと,事業化に向けたミーティングや各種特許申請に向けたミーティング,研究開発から事業化への受け渡し作業など多種多様な雑務が業務時間中に発生します.また入社してまもない内は,過度な残業は規制されるので生活全てを研究に捧げるという働き方も難しいかと思います.

またアカデミアでは個人単位で研究をすることが多いですが(もちろん協力関係はある),民間企業ではチームで研究をすることが多いです.若い頃から一個人として世界に名を轟かせたいという方はアカデミアの道に進むことをオススメします.

研究難易度

アカデミアの方が圧倒的に上です.アカデミアの研究はその分野での新発見を求められます.誰かが発見した事実の二番煎じでは駄目なのです.また研究活動としても,個人にかかる比重が大きいので常にプレッシャーと戦うことになります.任期制だと契約更新できるか否かという問題が嫌でも降りかかってくるからです.

そもそも博士号を取ること自体が難しいので,ポスドクの方たちはその難関をクリアしているというだけで尊敬されるべき人たちです.その中でアカデミックな分野で戦っていくわけですから,相当な難易度であると推し量ることができます.その分野でNo.1を取ってやるんだという強い気持ち,また実力が必要になります.

一方民間企業の研究難易度はそこまでは高くありません.業界初であればそれに越したことはないですが,論文は書けなくても特許を取ることさえ出来れば会社に貢献することができます.またたとえ2番手であっても,会社に利益をもたらす研究には積極的に予算が投じられます.このあたりの予算の柔軟性も研究難易度を下げている原因と言えます.民間企業ではチームで研究を行うことが多く,チームメンバー全員で研究活動を行うことになるので,1人あたりにのしかかる比重の大きさが軽減されます.個人で世界に名前を轟かせることはアカデミアに比べ難しいですが,研究予算をフル活用しチームで研究活動にあたることができるのが民間企業の研究職の特徴といえるでしょう.

また企業の研究職(研究開発職)は修士課程で卒業(修了)した学生も新卒として入ることができるので,入社(入所)の敷居が博士号取得前提のアカデミアと比べて低いです.

アカデミアにオススメの人

博士号を取り切った後も,現在と同じ研究を継続したい方はアカデミアに行くことをオススメします.企業に入ってしまうと,研究内容はどうしてもその会社に合わせなければならないので,現在の研究テーマと全く同じ内容を扱うことは極めて困難です.一方アカデミアは,予算内であれば研究テーマの自由が利くので,今現在の結果を出している研究を続けることができます.

また,個人の名前で研究活動をしたい方にもアカデミアをオススメします.既に博士課程で論文をいくつか書き,これからも個人の名前で世界に打って出たい人はアカデミアに行くべきです.企業の研究職も悪くはないのですが,個人で研究機会が与えられる会社は一握りです(NTT研究所など).

そして自分の希望する研究内容が基礎研究寄りの人,あるいは実用に程遠い研究がしたい人もアカデミアをおススメします.基本的に利益に全く結びつかないような研究を企業は嫌いますが,その研究に学術的な価値があればアカデミアでは研究し続けることができます.

企業の研究職にオススメの人

修士で卒業するつもりで研究職に就きたい人は企業の研究開発職をオススメします.アカデミアは博士号の取得が大前提となるので,修士号だけでアカデミアのポストに就くには難しいです.自分の興味ある研究が既に企業で行われているという方も民間企業の研究職をオススメします.最近は民間企業のR&D職出身の大学教授も増えてきており,民間の研究で成果を出し大学教授といったアカデミアのポジションに舞い戻るケースも増えています.民間企業は給与も高い水準で安定しているので,生活の面でも言うことはないはずです.

以上となります.いかがだったでしょうか.

アカデミアも企業の研究職も一長一短ありますので,自分の描きたいキャリアに合わせて柔軟に進路を決めてほしいと思います.

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